「ホーキング、最後に語る」(スティーヴン・W・ホーキング&トマス・ハートッホ)

 

今年3月に逝去したホーキング博士の最後の論文について、

1.佐藤勝彦氏によるホーキングの業績と思い出の紹介
2.論文共著者へのインタビュー
3.最終論文の解説
4.論文本文(和訳)

という構成で紹介した本。

さすがに「4」は、数式も多く、専門家でないと理解はできない。

「1」「2」はともかく、問題は「3」だ。

僕のような単なる「宇宙論好き」には半分も理解できたか分からないが、
要するに論旨をまとめると、

———————
従来のインフレーション説には、
宇宙の形がいびつになるという欠点があったが、

それをM理論やホログラフィック理論にもとづいて考え直すことで、
滑らかな宇宙になることが示される
———————

というもの。

宇宙論に興味がない人には、何を言っているのかさっぱりかもしれない。

僕の理解が足りてないことを前提に、
敢えて疑問に思ったことを挙げると、下記になる。

・「宇宙がいびつであるはずがない」という、
物理学者特有の美意識が根底にあるが、そのアプローチはそもそも正しいのか?

・M理論やホログラフィック理論(特に後者)は、
正しいことが証明されたわけではないのに、それを前提にしてよいのか?

・現状のあらゆる理論と矛盾なく(というか、忖度して)組み立てられただけの理論のように見えるが、
果たして、そうでなくてはならないという積極的な理由はあるのか?

一番目については門外漢がとやかく語るものではないので、
これ以上踏み込まないことにしよう。

個人的に気になるのは三番目。

現在の宇宙論は、相対性理論をはじめとして、
量子論やインフレーション理論、ひも理論、M理論などなど、
あらゆる理論が鵺のように入り混じって成り立っている。

要するに、どれかひとつの理論で宇宙を語ることはできず、
各理論が互いの不足を補いながら、
何とか実際の観測データと矛盾のない状態を保っているのである。

今回のホーキング博士の論文も、言ってしまえば、
これら「宇宙論互助会」のメンバーに謙虚に立候補したというだけで、
特に宇宙論の決定打となるものではないということ。

他の「互助会」メンバーの不都合にならないように、顔色を窺いながら、
恐る恐る発言したものであるという印象を受けてしまうのだ。

もちろん、それは僕が素人の門外漢のせいもあるのだが。

ただ逆を言えば、
それだけ宇宙論が行き詰まってきているということでもあり、

ここから先は、現代物理学の大本命である大統一理論が完成するまでは、
このような細かな「ジャブ」の積み重ねになるのかもしれない。

正直に言ってしまうと、天才・ホーキング博士の最後の論文としては、
ちょっと寂しいかな、、という印象だった。


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