「人狼城の恐怖 第一部ドイツ編」(二階堂 黎人)

2019年の特筆すべき読書体験といえば、
昨年末に買ったKindleが大活躍だったことと、

密室トリックへの興味から、
それまで読まなかった推理小説を読み始めたこと。

この『人狼城の恐怖』は、
当時世界最長の推理小説ということで、
ギネスにも載っているらしいのだが、

これはまさに正月休みを利用して読むしかあるまいと思い、
全4冊のうち、まずは1冊目を読んでみた。

いやぁ、これはなかなか面白い。

推理小説というよりも、
ホラー・スリラーの傾向が強いが、
普段あまり読まないタイプの小説だけに、
後半は一気に読んでしまった。

あらすじをざっと紹介すると、
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狼男にまつわる伝説があるという、「人狼城」。

はるか昔の中世に建てられた城なのだが、
独仏の国境線をはさんで、色違いの全く同じ城が、
渓谷を隔てて対峙している。

そのドイツ側の城に、ツアーとして10人ほどの客が招かれる。

城は断崖絶壁に面し、窓もないという状況のもと、
門の装置が故障し、全員が城に閉じ込められることになる。

そんな中、姿の見えない何者かによって、
一人、また一人と、

あるものは首を切断され、
あるものは宙吊りで血を絞り取られといった、

残忍この上ない方法で、次々に殺されていく。

犯人は、城の住人なのか?
それとも、ツアー客の中にいるのか?
殺人の動機は?

すべてが分からぬ中、生き残った者たちの懸命の努力も空しく、
最後に生き残ったのは、若い男女二人だけとなり、

そして彼らには最後の最後に、
もっともショッキングな結末が待っていた・・・。
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逃げ場のない状況でのサバイバルというのは、
古くからのホラー映画の王道中の王道なのだけれども、

ドイツの山奥の古城という舞台に、
狼男伝説というホラー要素を加え、
さらには密室トリックや犯人捜しまでもプラスして、

硬質な空気感というか、冷えた肌感というか、
非常に独特な感覚で、
その世界が読むものの心に鋭く入り込んでくる。

惜しむらくは、最後の最後で、
現実離れした要素が見えてしまったことで、

ただそれも、リアリズムでゆく推理小説と、
メルヘン的なホラーの掛け合わせというジャンルだと思えば、
楽しめないわけではない。

第二部はフランス編なので、
おそらくフランス側の「人狼城」で起きた事件が描かれるのだろうが、

これを書いている今も、
実は早く読みたくて仕方がないのである。