カルロ・ロヴェッリ 著「世界は「関係」でできている: 美しくも過激な量子論」(‎NHK出版)
まるで映画のワンシーンのように、
北海に浮かぶヘルゴラント島で、

若きハイゼンベルクが、
思索に耽るシーンから始まる。

そこから量子論の何たるかと、
その不思議さ、魅力について、

ロジカルに、そしてときに詩的に、
著者は語ってゆく。

そして前半の最後、
エンタングルメント(量子もつれ)を頂点とし、

この世界は、事象やモノが独自で存在するのではなく、
「関係性」でのみ捉えられる、という、
この本のテーマが力強く描かれる。

ここまでは見事だったのだけれども、
後半はやや蛇足感が強い。

ナーガールジュナの「空」の概念が、
量子論につながるというのは、
素晴らしい着眼点だと思うが、

ボグダーノフとレーニンの政争については、
唐突感がすごかったし、

最後の方で、
人間の主観にまで足を踏み込んで、

「意味」とは?「意識」とは?
の話になると、

こちらの頭の準備ができていないせいもあり、
???という感じだった。

自分はこの分野の本を何冊も読んできたが、
正直、なぜ行列が量子力学で有効なのかは、
恥ずかしながらこの本で初めて理解できたし、

つまり量子論については、
かなり丁寧に分かりやすく、
説明されているわけで、

どうせならば後半あまり飛躍せずに、
最後まで量子論に軸足を置いたまま、

「関係性」というテーマを、
掘り下げて欲しかった。