柿沼 陽平 著「古代中国の24時間-秦漢時代の衣食住から性愛まで」(中公新書)
紀元前数百年~紀元前後の中国における、
人々の生活の有様を、

一日24時間の流れの中で、
解説している。

衣食住や仕事についてはもちろん、
仕事終わりの居酒屋模様や、
恋人同士や夫婦の性生活など、

2,000年以上前の外国のことなのに、
現代の我々の感覚から、
それほどズレていないことばかりで、

納得感というか、
親近感をもって読むことができた。

受験勉強までに習った歴史というのは、
政治史を中心に、経済史、文化史など、

いわば、作られ、帳尻を合わされた、
出来事の羅列であり、

その裏には、
いつでも変わらぬ人々の日々の生活が、
確固として存在することを、
あらためて思い知らせてくれる。

人々の生活の観点から語られる歴史を、
「日常史」と呼ぶが、

僕が大学1年の頃(もう30年も前か・・)、
駒場のキャンパスで受講した、
古代ローマの日常史の授業が、
とても興味深かったことを思い出したわけだが、

古代中国は、
ある意味現代日本のルーツでもあるため、
さらなる興味を掻き立てられた。

そして、参考文献を執拗なまでに注に記し、
書物だけではなく、

木簡や彫像、出土品などの、
考古学的遺物をも、

エビデンスとして参照する本書の姿勢には、
敬意を表したい。