百人一首替へ歌(No.18)

百人一首替へ歌(No.18)

第三十五番歌

【原歌】
人はいさ心も知らずふるさとは
花ぞ昔の香に匂ひける
(紀貫之)

【替へ歌】
人はいさ心も知らずしらじらと
横雲たなびくふるさとの空

掛詞や序詞、特に凝った技巧もなく、
用いている語もありきたりで、
一見すると何の変哲もない歌なのだが、

いざ替へ歌を作ろうとすると、
相当悩まされた。

表現が難しいが、
語と語との連携が完璧というか、
機能的に密接していて、

たとえるならば、
単純な元素の組み合わせで、
複雑な分子ができあがっている、
といった感じか。

さすが貫之。

こんな完璧な原歌をパロディ化するのは、
畏れ多いことこの上ないのではあるが、

冒頭の五七は、
思い切ってそのまま残したうえで、
序詞として機能させ、

「知らず」から、
音つながりで「しらじら」を導き、
叙景歌とした。

結果として、
原歌にある物語的コンテクストは消滅してしまい。
何ともお粗末な出来映え。

第三十六番歌

【原歌】
夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを
雲のいづこに月宿るらむ
(清原深養父)

【替へ歌】
宵のまま短き夏の夜は明けて
宿なき道を急ぐ旅人

夏の夜は短いために、
さっきまで宵だと思ったら、
もう朝になってしまった。

こんなとき、
月は雲のどこに宿るというのだろう、

という、
古今集らしい機智に富んだ歌。

月を擬人化しているのが、
ちょっと現代の感覚にはそぐわないので、

「宿がない」からの連想で、
放浪の旅人を登場させ、

短い夜が明けて、
旅路を急ぐ光景としてみた。

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