第四十七番歌

【原歌】
八重むぐら茂れる宿の寂しきに
人こそ見えね秋は来にけり
(恵慶法師)

【替へ歌】
八重むぐらかき分け友の来ぬるかと
宿出てみれば秋風ぞ吹く

八重むぐらが茂る寂しい我が宿に、
人は訪れないのに秋が来ちゃったよ、
というこの季節にピッタリな(?)原歌。

「八重むぐら茂れる宿」という、
場面設定だけで十分なのに、

そこに「寂しき」という主観をダメ押ししたのは、
ちょっとクドいかなぁ。

しかも「秋は来にけり」というのも、
「気付き」による主観表現なわけで、

大変失礼ながら、
この原歌は稚拙といわざるを得ない。

なので替へ歌の方は、
ほんの少し主観を抑えるとともに、

秋風が吹いて草がざわざわした様子を、
友が訪ねてきたのかと勘違いする趣向に、
差し替えてみた。

第四十八番歌

【原歌】
風をいたみ岩打つ波のおのれのみ
くだけてものを思ふころかな
(源重之)

【替へ歌】
悲しきは風に追われし荒波の
岩に砕けてまた戻りゆく

強風に荒ぶる波。

その波が岩に砕けるように、
心を砕いて物思いをするという、

景物に自分の心情を喩える、
よくあるタイプの歌。

これを単純な叙景歌に替えるだけでは、
いささか面白くないので、

岩に砕けた波が、
また沖へと戻っていくさまを悲しいと捉える、
ちょっと啄木風or牧水風な感じで。