第七番歌

【原歌】
天の原ふりさけ見れば春日なる
三笠の山に出でし月かも
(阿倍仲麻呂)

【替へ歌】
ふるさとの山こそなけれ天の原
照らせる月を友も見つるや

結局帰国することが叶わなかった中国で、
故郷の日本(奈良)のことを思って詠んだ原歌に、
主観というか情感を若干プラスしてみた。

ここ中国には故郷の山(三笠の山)はないが、
夜空を照らすあの月を、
遠い日本の友も見ているのだろうか、の意。

第八番歌

【原歌】
わが庵は都のたつみしかぞ住む
世をうぢ山と人はいふなり
(喜撰法師)

【替へ歌】
わが庵は都のいぬい犬に噛まれ
手がいたばしと人はいふなり

諧謔歌ともいうべき原歌を、
さらに誇張して江戸狂歌風にしてみた。

原歌の「たつみ」とは南東の方角だが、
それを「いぬい」(北西)に置き換え、

その音から「鹿」ではなく「犬」を導くことで、
犬に噛まれて手が「痛い」=「板橋」とし、

原歌の「憂し」=「宇治」の掛詞(ダジャレ)を
変形して継承した。