女流義太夫の、鶴澤三寿々さんの講演が、東京音楽大学であるというので、受講しにいった。

副都心線の雑司ヶ谷駅で降りると、とても新宿と池袋の間とは思えない静かな街で、
スマホのナビを頼りに、細い道をクネクネと進んでいくと、東京音楽大学に着く。

受験シーズンの土曜日だというのに、学生が大勢いる。
チェロやらラッパやら、みんな楽器のケースを抱えて、楽しそうに談笑している。

そりゃ、4年間も音楽やれれば楽しいだろうな・・・。
でも卒業してからが、地獄だと思うけど・・・。

学生たちの間を、場違いなオッサンで恥ずかしいと思いながらすり抜け、
「A200」教室を目指す。

受講者は全部で50人ぐらい、ほとんどが60歳以上のご年配の方だったように見受けられた。

講演は2時間、義太夫三味線の実演やビデオ鑑賞などを交え、
2時間みっちり、内容の濃い大学の講義を聴いているようだ。

人の話に2時間も聴き入るというのは久しぶりの体験だったので、
一言も聞き漏らすまいと、真剣にメモをとる。

細棹の三味線や胡弓の実演も交えながら、
義太夫節、そして人形浄瑠璃についての歴史や基本的な事柄から、

おそらく三味線を弾いた人ではないと分からないような、
義太夫三味線独特の撥の持ち方や、勘所の押さえ方、駒の扱いといった具体的な内容まで、

まるで大学一年生のように、驚きと感動をもって聴き入ってしまった。

話によれば、義太夫というのは、三味線世界の中で、唯一家元制度が存在しないジャンルらしい。

こういう素晴らしい文化は、是が非でも、残していかなくてはならない。

 

義太夫三味線