ムラヴィンスキーが聴きたくなり、
チャイコやショスタコはさすがにもう十分なので、

何かドイツものを、、と思っていたら、
一番最初にこの「未完成」を見つけてしまい、
以来、なかなか抜け出せないでいる。

自分の場合、曲ではなく演奏というものに、
それほど執着することはないのだけれども、
この演奏だけは、別格。

老熟の極みというか、一言でいえば「大人のシューベルト」。

晩年の曲とは言いながら、シューベルトはまだ20代(!)、
ここまで大人びた演奏はちょっと、、となるのかもしれないが、
そんな理屈を超えた凄みがある。

第一楽章は、一回目の提示部よりも二回目、
そして展開部と徐々にテンポを落とし、

第二楽章は、第一楽章からの重厚さの中に優美と洗練をさらに加えて、
まことに美しい。

以前はフルトヴェングラーの、
あのひたすら暗い「未完成」をよく聴いたものだが、
あのような暗さやパッションはない。

控え目な、抑制された感情表現というか、
諦観にすら近いものを感じられる名演である。

特に第二楽章で、最初に転調して、
クラリネット、オーボエ、フルートとソロを重ねた後に、
激しいフレーズに入る部分、
ここからあとの表現が絶妙なるかな、何度聴いても鳥肌が立つ。
(この演奏だと18分40秒ぐらいからの部分)