よく、「肖像画は実際の2割増し」なんていうけれども、
自画像ともなると、4~5割増しにはなるのではないか。
僕には画家の心境は全く分からないけれど、
なぜ多くの画家は自画像なんてものを描くのだろうか。
やはり一種のナルシシズムがそこにあろうことは、間違いない。
依頼主が存在する肖像画ほどではないかもしれないが、
自画像というのもやはり、
「実験」や「遊び」をしづらいジャンルであろう。
だから、自画像を見ればその画家の力量が分かる、
と言ってもいい。
特に今回の展示のように、
数多くの画家の作品を集めたものだと、
その優劣は非常にはっきりすると思う。
数点ほど素晴らしいと思える自画像があった。
そんな中でも、大御所アングルのものは、
ずば抜けていた。
個人的には、アングルという画家はそんなに好きじゃない。
体躯のratioなどに、
おや?と思えるような画もいくつか、ある。
でもこの自画像はどうだろう。
欠点がないどころか、
いまにも画の中から語りかけてきそうである。
細やかな筆遣い、絶妙な陰影、そしてこの表情・・・。
アングルといえば20代の頃に描いた自画像の方が有名だけれども、
地位と名声を築き上げ、
貫禄と自尊心と自信の表情が入り混じったこちらの一枚の方が、
断然、凄い。
アングル、恐るべし。