世間的に名高い画家というものは、
どこかしら優れた点があるものだが、
正直、エル・グレコの良さだけは、僕には分からない。
そんな苦手意識解消の意味もあり、観に行ってきた。
結論としては、
「やっぱりどこがいいのか、さっぱり分からない」。
マニエリスム、と言ってしまえばそれまでなのだが、
形式を理由に作品を弁護するのは、本末転倒だと思う。
だから敢えていうと、デッサンが下手ですよね、この人。
体のバランスが、バラバラ。
中には、構図を整えるために、
苦し紛れにそうしていると思われるものもある。
あと、塗りが単調。
極端な厚塗りというせいもあるけど、ベタったした質感が、
上品さを欠いて見える原因となっているようだ。
ただ、レイアウトについては、流石と思わせるものがある。
例えば、今回の最大の目玉である「無原罪のお宿り」。
※関係ないが、「お宿り」って言葉は不自然だ。
どうしても「親鳥」を想像してしまう。
縦に長い作品で、かつ下から見上げられることを想定しているためなのだが、
この絵の重心は、極端に上部にある。
普通の絵画では、重心が画面中央に集まるようにするか、
あるいは下部に設定して安定感を出すようにすることが多い。
だがこの絵ではそのようなセオリーは完全に無視し、
思い切って画面最上部に重心を設定することで、
垂直方向への意識を、
観る側に焼きつけることに成功している。
下の、右側がそれなのだが、
同じように空に人が浮遊している左側の絵と比べても、
重心が極端に上に設定されていることが、分かると思う。
小さいサイズでみると、頗る不安定なのだが、
これが実際の巨大なサイズで観られることで、
安定を取り戻すのである。
でもこの絵自体は、好きじゃないですけど・・。