おそらくこの記事を読んでいただいた先輩から、

フルトヴェングラーによるオケ版の「大フーガ」もいいですよ

と葉書で教えていただいたので、探してみた。

1954年。ウィーン・フィルとの録音。
(先輩が指していたのは、この演奏かどうかは、分からないが。)

壮麗な弦の響きと、起伏の大きな演奏。
何ともドラマチックである。

確かに、こういう解釈もアリだと思う。いや、十分アリだ。

けれど、、、僕のこの曲に対するアプローチは別だ。

この曲はやはり、弦楽四重奏というところに、意義がある。

演奏する4人は、それぞれ人生を背負っている。

一番ヴァイオリンは、愛人ができて今が人生の絶頂かもしれない。
二番ヴァイオリンは、息子が闘病中かもしれない。
ヴィオラは、刹那主義で、今日のギャラでどこに飲みに行くかしか考えていないかもしれない。
チェロは、作曲当時のベートーヴェンと同じく、難聴に苦しんでいるかもしれない。

こんな例は極端かもしれないが、
4人それぞれの人生が、しかもフーガという形式で交差してぶつかり合う、

僕にとってのこの曲は、そんなイメージなのである。

これがオケ版になってしまうと、演奏者の個性は消えてしまい、
「フルトヴェングラーによるベートーヴェン」になってしまう。

もちろん、それはそれで超一級品なわけだが、
いわば、ウィスキーはロックで飲むべきか、水割りで飲むべきか、のようなもので、
結局は、好き好きということだ。

しかし先輩に教えてもらわなければ、
「大フーガ」には「水割り」という飲み方があるということすら知らなかったわけで、
「何事にも先達はあらまほしきことなり」。

One thought on “大フーガ(その2)”

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