夏の間は、2~3時間待ちとかだったようなので、
涼しくなってから行こう、と思っていたら、開催終了間際になってしまった。
3連休中ということもあったので、混雑を覚悟していたけれども、
入口で10分ほど待っただけで、あっさり入場できた。
でも案の定、中は入口に近ければ近いほど混雑。
いい加減、行列をして絵を鑑賞するのはみっともないですよ、と、
誰かが教えてほしい。
さて、昨夏に実際にオルセーには行ったので、
再会のものも初見のものあったけれど、印象に残った作品を3点ほど。
まずは、ブルトンの「落葉拾いの女たちの招集」。
レアリスムからは程遠く、かなり美化されているのだと思うけれど、構図が立派。
かがんでいる女性、立っている女性、そしてその身長差、
高低のバランスが計算し尽くされている。
画面上部の4分の1ほどを、何もない空が占めているというのが、
これまた絶妙なバランスを演出している。
お次は、ジェロームの「エルサレム」。
画面の奥行きを上手く使ったレイアウトなのだけれども、
特筆すべきは、画面手前部分。
光が当たって強いコントラストを作っているところに、
磔刑の影だけが伸びてきている。
エルサレムというタイトルから分かるように、
これはゴルゴダの丘のイエスの姿なのだが、
それを直接描かず、影だけで暗示するというのが、さすがはジェローム先生。
これは間違いなく、名画の領域だな。
最後は、ホイッスラーの「灰色と黒のアレンジメント第1番」。
画家の母親の肖像なのだが、
正直、肖像画としての出来栄えは大したことはない。
しかし、グレーと黒を基調としたモノトーンで統一された空間に、
人物を大胆に横向きに配置し、画面ほぼ中央を人物の輪郭のカーブが流れる、という構図は、
観る者に完璧な安定感を与えてくれるし、
さらに、そのカーブと、左上の絵の長方形とのコントラストや、
カーテンに描かれた細かな模様などが、
この絵が単調(退屈)とならないようなリズムを付加している。
まさに絵のお手本のような作品。
モネ、マネ、セザンヌたちの有名な作品もいくつかあったけれど、
有名だから良い作品というわけでもなく。
僕はこの3点と、あとは紹介しなかったけど、
ルノワールの「イギリス種の梨の木」、これだけで十分満足だった。