種村季弘とか澁澤龍彦とかって、
教科書には絶対に載らない作家だけれど、
僕は、漱石とか川端とかが好きだった一方、
こういうアウトロー作家の作品を読むことに、
幸せを感じる少年時代を送っていた。
種村や澁澤の文学は、美術なしには語ることはできないから、
今回のような展覧会は、まさにドンピシャ、
待ってましたと言わんばかりの、素晴らしい企画である。
エロ、グロ、ナンセンス、アナクロニズム、反芸術、、、
彼らにまつわる芸術を形容する詞は、
一般的基準でマイナスイメージであればあるほど、しっくりくる。
幻想主義とか、シュールレアリスムとか、
美術史側の説明では収まりきらない範疇に、
これらの作品は属している。
一見何のつながりもない、
それぞれが強烈な個性を放っている作品なのだけれども、
観ているうちに、通奏低音のような、
底を流れる共通した物語が浮かび上がってくるのが、
不思議だった。
その感覚を、言葉にしてしまうと野暮になるのだけれども、
まぁ、アポリネールあたりが、
そんなものはとっくに代弁してくれているだろう。
ただ、敢えて自分の言葉で語るなら、
芸術の根幹というか、非常にプリミティブな部分の情動というか、
クロマニヨン人が洞窟壁画を描いていたときのあの感覚、
そんなものを呼び覚ましてくれるのだと思う。
エロスとかナンセンスとか、そういう言葉で抽象化される前の、
もっとドロドロとした澱のようなもの、と言えばよいだろうか。
いまの展覧会は、どこもキレイすぎる。
こういう企画を、もっともっとやってほしい。