有楽町の交通会館の中にある、秋田県のアンテナショップへ。
表通りに面した店舗は、別の自治体が占拠しているゆえ、
秋田の店は、奥まったところにひっそりとある。
秋田といえば、秋田美人にあきたこまち。
画家には小田野直武がいて、秋田民謡も三味線でよく弾く。
なんやかんやで知識はあるが、
実は秋田県には足を踏み入れたこともなければ、通り過ぎたこともない。
そんな県は、もしかしたら日本全国でここだけかもしれぬと考えて、
いや、もしかしたら飛行機で上空ぐらいは通過したことがあるかもしれぬと思ったけれど、
それはさすがに秋田の方に失礼かもしれない。
さて、言わずもがな、秋田は米どころなわけだが、
持論として、米が取れるからといって旨い酒ができるとは限らない、というのがある。
要するに、食する米と酒にする米は別物であって、
植物が別なら、それを旨くする土壌や水も別である、
それはあたかも、四方を海に囲まれた島国が必ずしも水泳で金メダルを独占するとは限らない、
というのと同じ理屈である。
なので、秋田だからといって、旨い酒があるという先入観は全く捨てて、
限られた予算の中で、ラベルが剥がれるぐらいほどに矯めつ眇めつチョイスしてみて、
これぞと思って買ったのが、これ。
「天の戸 美稲(あまのとうましね)」。
決め手は、特別純米だが精米歩合が55%だったこと。
要するに、よく削ってあり、吟醸に近い。
吟醸までいくとフルーティすぎるのだが、吟醸に近い純米は間違いなく旨い。
そしてこの酒も旨かった。
まろやかで、こんなに優しい口当たりの酒は久々かもしれない。
一緒に購入した八郎潟名産のわかさぎの佃煮をツマミに飲めば、
この上ない極楽。
朝の満員電車で、座席争いに敗れたことも、
寒いのに間違えて冷たいコーヒーを買ってしまったことも、
一日のイヤなことをすべて忘れさせてくれる逸品である。
この記事を書きながら、この酒は飲み終えた。
実はあと2種、秋田の酒を買ってある。
旨かったら、またここで紹介しようと思う(※)。
※筆者注:ここで紹介しているのは、基本旨かった酒だけで、
ここで紹介している倍以上の酒が、我が家では消費されているのである。