合奏団ZERO 第14回定期演奏会

僕が中学生の頃、マーラーといえば、
「巨人」(1番)、「復活」(2番)あたりが有名だったけれど、
僕のお気に入りは、とにかく「4番」。

ある時期は、毎日のようにスコアを見ながら、
このシンフォニーを聴いていたように思う。

子供の頃は、一曲に対し、何枚もCDを買うお小遣いはないから、
ひたすら、バーンスタインのウィーン・フィル版を聴いていた。

演奏はこの上なく素晴らしかったのだけれども、
唯一の難点は、第四楽章の独唱が、ボーイソプラノだったこと。

まぁ、それしか聴いていなかったのだから、
当時はそういうものなんだと思っていたのかもしれないけれど。

今回、そんな「4番」のライブ演奏があることを知って、
懐かしさもあり、迷わず聴きに行ってきた。
(歌はもちろん、ボーイソプラノではなく、本物のソプラノです)

最近のアマオケはレベルが高いとはいえ、
この楽団の演奏は聴いたことがなかったし、
上述のように、マーラーの四番には、僕なりの思い入れもある。

失礼ながら、最初は半信半疑で、
一曲目のベートーヴェンを聴いていた。

可もなく不可もなく、、という印象で第一楽章が終わりかけ、
コーダに突入したそのとき、
急に湧き上がってきたような、パワフルな演奏に驚いた。

それまでは、アンサンブル重視の上品な演奏だな、と思っていたのだけれど、
ようやくエンジンが温まってきたのか、
エネルギッシュに跳躍する音の渦に、
一瞬どきっとさせられたのである。

そこからは、ベートーヴェンの二番ぐらいはお手の物といった感じで、
危なげのない見事な演奏で一曲目は終了。

次は果たして、どんなマーラーを聴かせてくれるのか。

もはや半信半疑ではなく、楽しみと期待を胸に、後半のプログラムを待った。

さぁ、マーラーが始まった。

印象的な鈴の音で始まる第一楽章は、
僕の中のイメージでは、北欧あたりの雪の夜、
家の中では、子供が温かい寝床に入り、不思議な夢を見ている、という、
まさにメルヘンの世界。

そして何と言っても甘美な第二主題が聴かせどころなんだけれど、
アツくなりすぎず、かといって冷めてもなく、
絶妙なバランスで演奏していたように思う。

時折顔を出す、管楽器のソロも、申し分ない。
(特に、フルート、オーボエ、クラリネット、トランペットに拍手したい。)

第二楽章は、割愛させていただく。

第三楽章。
マーラーの書いた音楽の中で、最も美しい曲のひとつだと思う。

冒頭の、ヴィオラとチェロに、セカンド、
ファーストヴァイオリン(+オーボエ)と絡んでくるあの部分は、
何度聴いても感動的だ。

演奏は完璧。
これ以上のない緻密さとカンタービレで、
円熟した大人の演奏といった感じだ。

低音弦はマーラーを弾くにしては少人数だったと思うが、
それでもここまで聴かせられるのは、見事としか言いようがない。

特にチェロの音色が絶品だった。

ヴァイオリンの祈るような高音で終わり、最終楽章へ。

ここまでの演奏が完璧であっただけに、
最終楽章への期待は、いやが上にも高まる。

ただ、、

期待値を上げすぎてしまったせいなのか、
正直、ちょっとこのフィナーレはがっかりだった。

というのも、独唱の声が聞こえないのである。

オケと声の波形がうまく一致してしまった、
と弁護しようかと思ったけれど、
うーーん、正直、声量不足だったのではないかと。
それとも、喉の調子が悪かったのか。

どちらにせよ、ちょっと最後がモヤモヤした感じで終わってしまった。

ただ、繰り返すけれど、オケの演奏は素晴らしく、
思い出のマーラーを、ここまで感動的に聴かせていただき、
ありがとうございました、と言いたい。

次の演奏会も、足を運ばせてもらおうと思っている。