「術語集-気になることば」(中村 雄二郎)

 

40のキーワードについて、哲学的な解説を加えた本。

30年以上も前の本なので、ワードの選定が若干古い気もするが、
一部を紹介すると、

アイデンティティ、遊び、エロス、エントロピー、神話、パトス、都市、パラダイム、弁証法、暴力、レトリック・・・

といった塩梅である。

択ばれた用語だけでも十分に難しいが、
本文もなかなか厄介で、
哲学者の書く文章というのは、やはり僕の手には負えない。

正直、理解度40%といったところだろう。

その中でも少しだけ理解できて、しかも気になったのが、
「パフォーマンス」という語の説明において、

「ロゴス」と「パトス」という対になる概念を持ち出し、
そこに西洋の演劇と日本の近松(「心中天の網島」)を引き合いに出して、
説明していたくだり。

この本ではそこまでは深入りしていなかったが、
近松を例に挙げるのであれば、

なぜ近松の劇が、人形浄瑠璃において演じられたのかということを考えると、
「パトス」と「ロゴス」の境界線みたいなものが見えてこないだろうか。

太夫とは「ロゴス」的であり、人形とは「パトス」なものであって、
この二つが奇跡的に融合しているのが人形浄瑠璃の世界であり、

だから同じ作品が歌舞伎で演じられているのを観ても、
何か物足りなく感じてしまう理由もそこにあるのかもしれない。