クラリネットほど甘くなく、オーボエほど尖ってない。
そんなファゴットが、最近のお気に入りである。
音色は素朴、音域は豊かで、
倍音混じりの低音域と、澄んだ中にもとぼけたような表情がある高音域。
森の中にそっと置いておいてもそのまま同化してしまうのではないかという外見も、
魅力のひとつだ。
そんなファゴットも、オーケストラに入ると極めて地味な存在となってしまうが、
何曲かの有名なコンツェルトもあり、
モーツァルトを筆頭に、ロッシーニ、ウェーバーなど、
ちょっと珍しい作曲家が手掛けている。
僕のお気に入りは、フンメル作曲の「ファゴット協奏曲」。
フンメルは一般的にはそれほどメジャーではないが、
ベートーヴェンとほぼ同時期に活躍した、一流の作曲家にして演奏者であり、
古典派とロマン派をつなぐ存在として、
実に多くの作曲家たちに一目置かれていた、大音楽家である。
このコンツェルトを聴いても分かるかとは思うが、
楽器の使い方が実にしっかりしていて、メロディも美しく、楽しく、
ファゴットとオーケストラ双方の良さを見事に引き出している。
特にフィナーレが個性的。