ギリシャにせよ、エジプトにせよ、メソポタミアにせよ、中国にせよ、
古代文明における星の捉え方としては、
ある程度まとまった星の群れをひとつの集団として、
いわゆる「星座」の概念を形作ってきたわけだが、
日本での捉え方はそれとは異なり、
単独もしくは、2~3個の星に対して命名を行ってきた。
(北斗七星やカシオペヤ座のような例外はある)
そのような「星の和名」を網羅的に紹介したのが本書である。
ただいわゆる事典のように事実だけを語るのとは違い、
フィールドワークの成果も記載することで、
民俗学的な資料の色も濃くなっている。
要するに天体好きには垂涎の一冊なわけだが、
敢えて2点ほど不満がある。
・その1
写真を載せてくれているのはありがたいが、それよりも、
例えば「こと座のβ、γ、δ、ζで『マナイタボシ』と呼ばれている」と書かれていても、
それらの星の配列を示してくれなければ、
読んでいる方はその形をまったく連想できないわけで、
各星座の一番最初に、それを構成する星の図を、
ぜひとも載せて欲しかった。
・その2
「星の和名」については、おそらく方言同様、
その地方によって特色がみられるはずである。
本としての構成上、星座別に紹介せざるを得なかったのかもしれないが、
付録でもよいので、地方ごとの呼び名の特徴のようなものを、
(あるのであれば)考察して欲しかったとも思う。
ともあれ、星好き必見の力作である。