古典ミステリーの傑作、ということは知っていたけれども、
タイトルがなんか堅苦しくて、ついつい敬遠していた。
とある一家に関わる人々が、
マザー・グースの童謡の内容に沿って次々に殺害される事件を、
名探偵ヴァンスが解決する物語。
「僧正」というのは、
殺人犯人が、犯行声明文にそのように署名していたことと、
作品中の重要なアイテムである、
チェスの駒の「ビショップ」からきている。
登場人物に物理学者や数学者が何人もいるため、
様々な法則や定理などについての話題が飛び交うのだが、
それらに関心がない人にとっては、
その部分が退屈・難解な要素として大きなマイナスポイントになるかも。
まぁその部分を差し引いたとしても、
殺害方法に特殊なトリックが使われているわけでもなく、
犯人の殺害動機にも無理矢理感もあって、
現代風の推理小説に読み慣れていると、
やや物足りないのは否めない。
ただ、最後の最後で、犯人と面と向かいながら、
自分が犯人を知っていることを本人には悟らせずに、
徐々に犯人を追いつめていく名探偵ヴァンスの仕掛ける心理戦が、
なかなか読み応えがある。
派手な仕掛けやトリックを用いずに、
人物の心理をベースにして犯人捜しを行うという、
地味ではあるが、通好みの作品であることは間違いないだろう。