第一番歌

【原歌】
秋の田のかりほの庵の苫をあらみ
わが衣手は露にぬれつつ
(天智天皇)

【替へ歌】
衣手を濡らす涙のゆゑ問へば
恋しき人を待つ田の夕暮れ

原歌はおそらく民衆の歌を、
名君と言われた天智天皇のものとした歌で、

厳しい生活感のようなものが滲みでており、
第一番歌としては「華」がないわけだが、

それをここでは本歌取りらしく、
恋の歌に仕立て直した。

袖を濡らす涙は何のせいだろう、、
と考えてみたら、

それはこの夕暮れのころ、
稲穂が実ったこの秋の田で、
恋しい人を待っているからだ、
と気付く。

自画自賛ではあるが、
「待つ田の夕暮れ」というフレーズが、
ポイント。

第二番歌

【原歌】
春過ぎて夏来にけらし白妙の
衣干すてふ天の香具山
(持統天皇)

【替へ歌】
たなびける衣の白に行く春の
色やは残る天の香具山

夏の青空の下に干された白い衣の鮮やかさ、
そして目の前に聳える天の香具山、

という、
まるで絵画のような原歌の雰囲気はそのままとし、

「衣の白色に既に春は残っていない」と、
反語表現を用いてやや理知的な歌にしてみた。

原歌のもつ「白」に対する感受性を、
逆手にとって強調した形となる。