第六十三番歌

【原歌】
今はただ思ひ絶えなむとばかりを
人づてならでいふよしもがな
(左京大夫道雅)

【替へ歌】
もう君をあきらめるよということさえも
伝えることができぬこの恋

まぁなんというか、
相変わらず女々しい、
男性歌人の恋の歌。

そういう意味では、
現代の草食化(?)している男子にも、
通じるものがありそうで、
ちょっとJ-POPの歌詞風にしてみた。

LINEもブロックされたんでしょうね、
押してもダメだし、
引いてもダメ。

挙げ句の果てには連絡すら取れず、
悶々としたまま、その恋は終わる。

第六十四番歌

【原歌】
朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに
あらはれわたる瀬々の網代木
(権中納言定頼)

【替へ歌】
網代木にさかるる川の音冴えて
晴れ渡りゆく宇治の朝霧

百人一首には珍しい、
後世の京極派風の叙景歌。

宇治の朝霧という光景が、
『源氏物語』を思い起こさせ、

単なる叙景歌というよりも、
物語要素を含んでいる。

原歌は、朝霧の晴れてきたところに、
網代木が見え始めるという視覚の変化を、

まるで繊細なスローモーションのように、
見事に描いているわけだけれども、

それに対抗する術は僕にはなく、
替へ歌ではやむを得ず、
聴覚へと変換させてもらった。