2016年、ベルギー・フランス合作のサスペンス。
派手などんでん返しや、
鮮やかな伏線回収があるわけではないが、
如何にもヨーロッパ映画らしい、
ゆったりとしたテンポで、
じわじわと惹き込まれてゆくサスペンス。
真面目なサラリーマンのデュバルは、
保険会社を解雇される。
仕事もなく落ち込んでいたある日、
謎の勧誘電話があり、
面接を受け、無事合格。
その仕事内容は、
隔離された部屋に一日中閉じこもり、
カセットテープに録音された電話の内容を、
タイプライターで文字起こしする、
というものだった。
仕事自体は単純なため、
もともと真面目なデュバルはすぐに慣れるが、
録音内容を聴いているうちに、
どうやらこの仕事は、
大統領選に絡む重大な陰謀に関係しているのでは、
と気付き始める。
これはヤバい、と直感したデュバルは、
退職を願い出るが聞き入れられず、
逆に、雇用主や治安当局による、
トラブルに巻き込まれてしまい、
雇用主のために秘密を守るのか、
それとも情報提供して捜査協力するのか、
選択を迫られるのだが、
やがて自身や友人の身の上にも危険が迫り、
遂に重大な決断をすることになる…。
主演のフランソワ・クリュゼが、
とにかくいい。
他の出演者がどうでもよくなってしまうほど、
中年男性の渋さや悲哀といったものを、
その一挙一動から醸し出していて、
まさに演技とは、こういうものなのだろうと。
ハリウッド映画のようなテンポ感はないのだが、
ワンシーンごとの間というか、
あの画面から滲み出てくるような倦怠感。
断酒会のような、
ストーリーとは無意味に思える描写であっても、
決して「蛇足」ではなく、
作品に厚みを出すための仕掛けになっている。
ちょっとレトロ感があって、
静かーーーーなサスペンスの良品。
適正価格(劇場換算):1,800円