この作家の作品を読むのは3作目。
『斜め屋敷の犯罪』の大胆なトリックに惹かれ、
次に、評判高い『占星術殺人事件』を読んだものの、
オカルト色が強すぎて、
謎解き小説としてはイマイチだった。
そして、この作品。
結果としては、
かなり満足のゆく作品だった。
まずはその猟奇性。
ある意味『占星術殺人事件』以上に、
血腥く、残酷な話ではあるのだが、
怪談的・冒険譚的要素がプラスされているせいか、
ワクワク・ゾクゾク感は、こちらが上。
そして、『斜め屋敷の犯罪』で披露したような、
物理トリック。
そんなの絶対ムリでしょ!
と思うのが、
実際そのとおりだったりするのだが、
推理小説として論理が破綻している箇所もなく、
殺人の動機にしても納得がゆく。
横浜の暗闇坂という、
ローカルで不気味な土地と、
スコットランドのネス湖畔を行き来し、
さらには戦前のエピソードと、
50年近い時間を行ったり来たりしながら、
個性豊かな人物たちが、
(良くも悪くも)活躍する、
ミステリー初心者にもオススメできる、
満足な一冊だった。