重度のアルコール依存症に苦しむ、
医者でもある著者が、
施設に入ったり、入院したり、
カウンセリングを受けたり、
あらゆることを試みながらも、
酒を断つことができないでいたが、
「バクロフェン」という薬を服用することで、
遂に酒への渇望を完全に抑制した、
その一部始終を記した本。
多少の脚色はあるのだろうが、
ヘタな小説を読むよりも、
読み応えがある。
著者の場合は、
何かに対する不安があると、
酒に手を出してしまうらしく、
多いときだと、
一日にウィスキーひと瓶、
その他、ウオッカのショットを、
立て続けに飲むシーンも、
本書には多い。
そしてただ飲むだけではなく、
記憶を無くして、
時には気を失って大怪我を負い、
病院で眼が覚める、
という繰り返し。
大事なのは、著者が医者であり、
自らのアルコール依存を、
単なるだらしなさや、
悪癖といったものではなく、
明確に「病気である」、
と捉えていたこと。
ただ、医者がアルコール依存に陥るということで、
自分に対する世間の眼が厳しくなるのでは、
という不安や葛藤もあり、
その辺りが実に生々しく描かれている。
そして彼の素晴らしいところは、
自らが依存症を克服しただけではなく、
それを医学論文の形で発表し、
同様に苦しんでいる他の患者のために、
「バクロフェン」の普及に、
努めているところだろう。
一時期酒量が増えて、
悩んでいた自分ではあるが、
この著者に比べれば、
自分は病気というレベルではない、
と安心したのと、
やはり飲み過ぎは良くない、
とあらためて自戒できたのが、
読後の収穫であった。