小学館で、あの『日本国語大辞典』をはじめ、
数多くの辞書を手掛けてきた著者によるエッセイ。
著者によれば、
最初は辞書に携わるつもりなどさらさらなく、
気が付いたら、
この仕事を任されていたという。
そういえば、
自分が大学4年生(実体は6年生)の頃、
国語国文科ということもあり、
この著者とは逆に、
辞書を作りたいという希望があり、
就活での出版各社との面接時に、
その旨を熱く語ったら、
今だから、はっきり書くけど、
「角川」の担当者には、
鼻で笑われたのを覚えてる。
え?今の時代に辞書?
と。
まぁそんな昔話はさておき、
著者が、
私は「ことば」とは人間の営みの中から
生まれてきたものなので、
「ことば」とかかわることは、
人間とかかわることに他ならないと考えている。
と語っているように、
単に辞書作りの仕事を紹介するのではなく、
それを取り巻く人間関係、
とりわけ失敗談を含む印象的なエピソードを、
分かりやすく、
ユーモラスな語り口で、
紹介している。
辞書を作るというと、
ひたすら机に向かい、
本の山に埋もれている、、
というイメージがあるが、
実際はそうではなく、
そこに関わる多くの人との、
喜怒哀楽の入り混じった、
様々なドラマがあるんだということを、
知らしめてくれる。
かくいう私は辞書マニアで、
『日本語大辞典』全13巻、
『大漢和辞典』全12巻、
古語辞典は8冊が、
(ついでにプリニウスの『博物誌』も)
我が本棚には鎮座しているわけで、
前述の就活時代の記憶とともに、
楽しく読ませてもらった。