
「感想戦」というのは、
将棋だか囲碁だかで、
試合後に対戦者同士が、
試合内容について考察することを、
指すらしい。
当ドキュメンタリーは、
3.11の震災当日、
わずか100数名の観客を前に、
すみだトリフォニーホールで演奏された、
新日本フィルの「伝説のマーラー」
についての「感想戦」である。
その演奏会の10年後、
演奏者や指揮者、観客による、
当時を振り返るインタビューが、
メインの内容。
特に演奏者の中には、
被災地出身の方もいたようで、
この演奏に対する覚悟のほどが、
窺われた。
震災当日の演奏会は、
ともすると「不謹慎」と言われかねないが、
この当時は、
まだ被害の全容も明らかになっておらず、
原発の事故も発生していないこともあり、
その批判は当たらないと思う。
(次の日の演奏会は、中止となったそうだ)
この演奏会が、
「伝説」になっているのだとしたら、
演奏曲が、
マーラーの第5交響曲であったことが、
非常に大きいだろう。
絶望的な葬送行進曲から始まり、
美の極致であるアダージェットを経て、
歓喜のフィナーレへ、
という構成のこの曲が、
この日会場にいた全員の、
心の波長をシンクロさせたに違いない。
音楽が人の心を動かす力を、
あらためて実感できる、
映像だった。