うーん、ちょっと想像していた本と違った。
「邪悪な行いは邪悪な人間がするものとは限らない。
それは強い社会的勢力の影響のせいかもしれない」
ということを、様々な「邪悪な行い」を例に挙げて、
心理学的に考察した本。
ちなみに、タイトルにもなっている、
「悪について誰もが知るべき10の事実」とは、
1.人間を悪とみなすのは怠慢である。
2.あらゆる脳はすこしサディスティックである。
3.人殺しは誰にでもできる。
4.人の不気味さレーダーは質が弱い。
5.テクノロジーは危険を増大させる。
6.性的逸脱はごく普通のものである。
7.モンスターとは人間のことである。
8.金は悪事から目を逸らさせる。
9.文化は残虐行為の言い訳にすることはできない。
10.話しにくいことも話さなければならない。
ひとつひとつの内容が薄っぺらいというか、
著者はしきりに「科学的」ということを強調しているけれども、
科学的著述において肝要である「仮説と実証」という順序を踏まえず、
ダラダラと事実と感想を述べている感が強い。
「金が人を駄目にする」ということを語っている章では、
当然ながら触れられるべき資本主義経済についてはスルーだし、
「性的逸脱」の部分については、
必要以上にやたらと細かいと思ったら、
突然「自分はバイセクシャルである」ということをカミングアウトするし、
読んでるこちらが、
「まぁ、落ち着けよ」と言いたくなる。
そもそも「悪いことをした人=悪人」、
と即断できないのは自明であり、
社会環境が大きな要因となっていることは、
言うまでもないだろう。
ただ、世の中でニュースとなるような特異な事件だけではなく、
日常的ににあるような「異常」なこと、
あるいは歴史を揺るがすような「大事件」でさえも、
その原因は当事者が「悪人」であったせいではなく、
そうならざるを得なかった別の要因があったのだと考えてみることも、
必要なのだと思わせてくれる。
要するにこの本で伝えたかったことは、
物事は多面的に眺めなくてはいけないよ、
という教訓かな。