そういえば改装してからの根津美術館に行っていないことに気付き、
ちょうど「燕子花図屏風」を公開しているということなので、
足を運んでみた。
琳派については常々語っているのだけれども、
これはデザインだと思って対面するのがいい。
屏風一面に描かれた燕子花と対面して、
そこに深い意味をさぐろうとするのは自由だけれども、
やはり肩の力を抜いて、
パターンの生み出す気持ちよさに浸るのが、
個人的には合っている。
それにしても、この燕子花がもしも絵画だったら、
つまらなかったんだろうなと思う。
あくまでも日用品である屏風として、
空間の一部として機能をしているからこそ意味があるのであって、
屏風というのはやはり空間芸術という文脈の中で捉えなくちゃいけないのかな、
とも思う。
僕のお気に入りは、
鈴木其一の「夏秋渓流図屏風」。
水ほど複雑な色合いを示すものはないはずなのに、
青でベタ塗りすることに、何のためらいも見られない。
気持ちよいぐらいの潔さだ。
ただ水脈の描き方は、其一の特徴が存分に発揮されていて、
色彩の濃淡による奥行感を捨てた変わりに、
何ともすがすがしい流動感を得ることに成功している。
見ているだけで涼しくなるという意味では、
屏風としての機能も十分なわけだ。