「宇宙が始まる前には何があったのか?」(ローレンス・クラウス)

 

科学の新刊は、女房を質に入れてでも買え、というのが僕の信条。
(女房は、いないですが)

それだけ期待して買ったのだが、ちょっとがっかりな結果に。

全体の7割は、今までの宇宙論についてのまとめ。
かなりシンプルにまとめすぎているため、分かりづらい箇所もある。

残りの3割で、いよいよ著者のオリジナリティが披露されるわけだが、
神学だの宗教だの、、という話を持ち出して中途半端に終わるという、
サイエンス本としては、一番踏んではいけない地雷を踏んでしまったようだ。

要するに、目新しいことは何一つ書かれていない。

「宇宙が始まる前には何があったのか?」

この本の邦題(原題は「A UNIVERSE FROM NOTHING」)にもなっているこの問いに対しては、
真空での量子ゆらぎにより宇宙が誕生した、というのが、科学界でのほぼ定説になっているわけで、

今回、そうではない新説が紹介されるのかと思いきや、
語られるのは量子ゆらぎについて、しかもトンネル効果等のディテールの説明もないため、
何とも歯切れの悪い仕上がりとなってしまっている。

一番のサプライズは、「あとがき」に、あのリチャード・ドーキンスがこの本について、
「『種の起源』に匹敵する」という賛辞を送っていること!!

「あとがき」でも自ら述べているが、著名な進化生物学者のドーキンスも、
宇宙論や量子論になると、まったくの素人だということで、
おそらくこの本の内容の半分も理解できていなかったのではないかと思われる。
※あるいは、読んでないのかもしれないが。