以前、鎌倉にある大谷記念美術館にデュフィ展を見に行ったのはいつだったか・・、
と、このブログを遡ってみても見つからず、
仕方ないので、罰ゲームのように放置されている以前のブログを探してみたら、
2009年7月の記事にあった。
かれこれ、もう5年も前のことか。
思えば、この5年間は、実にいろいろなことがあった。
でも絵の趣味は変わっていないらしい。
おそらく今後も変わらないだろう。
いや、変わったとしても、デュフィを好きでなくなる理由が見当たらない。
我々は、モノに色があるのが当たり前だと思っているし、
色があれば、そこにモノがあるのも当然だ。
しかしこの芸術家には、色とモノ(=カタチ)は、別の概念として捉えられているのだろう。
印象派の画家たちは、カタチの中に、徹底的に色を見つけようとしたけれども、
デュフィにとっては、そこにはまず色があるのであって、カタチは二の次、
色とカタチが同じ枠内に収まる必要など、まるでなかった。
今回気に入った一枚めは、
いかにもデュフィらしい、「ヘンリーのレガッタ」。
3つの国旗を、前面に大胆に配置しているのが、効果を発揮している。
デュフィにしては、割と珍しい構図かもしれない。
圧巻だったのが、「パリ」。
横2m近くあるカンバスの上に、20世紀初頭の芸術家たちが憧れた理想の都、
パリのパノラマが拡がっている。
何の捻りもない、ストレートな画題である分、
デュフィのパリへの愛情が十分に伝わってくる。
デュフィの特徴である、あの淡いパステルカラーは、
油彩よりもむしろ水彩の方が、その効力を発揮できる。
今回出展された水彩画はどれも素晴らしかったけれども、
一枚選ぶとすれば、この「マキシム」。
華やかな婦人たちの色の中心に放り込まれた、黒のドレス。
この「黒」が、全体を引き締めてることに成功している。
計算し尽くされた配色である。
例えばシャガールやマティスも、一見デュフィと同じような色遣いのように感じるが、
デュフィの絵には、彼らのような切迫してくるものがない。
かといって、薄っぺらい退屈な絵になるわけではなく、
逆にそれが魅力になるのだから、天真爛漫というか、不思議な魅力をもった画家だと思う。
今回は出展されていないが、デュフィには「モーツァルト」という作品がある。
(ほぼ同じ構図の「ドビュッシー」は出展されている)
デュフィの絵を見ると、何となくモーツァルトを思い出すのは、
この二人の芸術家には、ジャンルと時代を超えた共通点があるからかもしれない。