僕が中学生の頃、マーラーといえば、
「巨人」(1番)、「復活」(2番)あたりが有名だったけれど、
僕のお気に入りは、とにかく「4番」。
ある時期は、毎日のようにスコアを見ながら、
このシンフォニーを聴いていたように思う。
子供の頃は、一曲に対し、何枚もCDを買うお小遣いはないから、
ひたすら、バーンスタインのウィーン・フィル版を聴いていた。
演奏はこの上なく素晴らしかったのだけれども、
唯一の難点は、第四楽章の独唱が、ボーイソプラノだったこと。
まぁ、それしか聴いていなかったのだから、
当時はそういうものなんだと思っていたのかもしれないけれど。
今回、そんな「4番」のライブ演奏があることを知って、
懐かしさもあり、迷わず聴きに行ってきた。
(歌はもちろん、ボーイソプラノではなく、本物のソプラノです)
最近のアマオケはレベルが高いとはいえ、
この楽団の演奏は聴いたことがなかったし、
上述のように、マーラーの四番には、僕なりの思い入れもある。
失礼ながら、最初は半信半疑で、
一曲目のベートーヴェンを聴いていた。
可もなく不可もなく、、という印象で第一楽章が終わりかけ、
コーダに突入したそのとき、
急に湧き上がってきたような、パワフルな演奏に驚いた。
それまでは、アンサンブル重視の上品な演奏だな、と思っていたのだけれど、
ようやくエンジンが温まってきたのか、
エネルギッシュに跳躍する音の渦に、
一瞬どきっとさせられたのである。
そこからは、ベートーヴェンの二番ぐらいはお手の物といった感じで、
危なげのない見事な演奏で一曲目は終了。
次は果たして、どんなマーラーを聴かせてくれるのか。
もはや半信半疑ではなく、楽しみと期待を胸に、後半のプログラムを待った。
さぁ、マーラーが始まった。
印象的な鈴の音で始まる第一楽章は、
僕の中のイメージでは、北欧あたりの雪の夜、
家の中では、子供が温かい寝床に入り、不思議な夢を見ている、という、
まさにメルヘンの世界。
そして何と言っても甘美な第二主題が聴かせどころなんだけれど、
アツくなりすぎず、かといって冷めてもなく、
絶妙なバランスで演奏していたように思う。
時折顔を出す、管楽器のソロも、申し分ない。
(特に、フルート、オーボエ、クラリネット、トランペットに拍手したい。)
第二楽章は、割愛させていただく。
第三楽章。
マーラーの書いた音楽の中で、最も美しい曲のひとつだと思う。
冒頭の、ヴィオラとチェロに、セカンド、
ファーストヴァイオリン(+オーボエ)と絡んでくるあの部分は、
何度聴いても感動的だ。
演奏は完璧。
これ以上のない緻密さとカンタービレで、
円熟した大人の演奏といった感じだ。
低音弦はマーラーを弾くにしては少人数だったと思うが、
それでもここまで聴かせられるのは、見事としか言いようがない。
特にチェロの音色が絶品だった。
ヴァイオリンの祈るような高音で終わり、最終楽章へ。
ここまでの演奏が完璧であっただけに、
最終楽章への期待は、いやが上にも高まる。
ただ、、
期待値を上げすぎてしまったせいなのか、
正直、ちょっとこのフィナーレはがっかりだった。
というのも、独唱の声が聞こえないのである。
オケと声の波形がうまく一致してしまった、
と弁護しようかと思ったけれど、
うーーん、正直、声量不足だったのではないかと。
それとも、喉の調子が悪かったのか。
どちらにせよ、ちょっと最後がモヤモヤした感じで終わってしまった。
ただ、繰り返すけれど、オケの演奏は素晴らしく、
思い出のマーラーを、ここまで感動的に聴かせていただき、
ありがとうございました、と言いたい。
次の演奏会も、足を運ばせてもらおうと思っている。