板橋区立美術館のある、赤塚城址付近は梅の名所で、
この日もすでに八分ぐらい、

だいたい花というと桜、というのが日本的であるかのように勘違いされているけれど、
僕は断然、梅派。

桜のような「うるささ」がなく、小さい花をしっとりと上品に付けている姿は、
何ともいじらしい。

そこまで書くなら写真の一枚ぐらい載せればという話だが、
何とスマホを忘れるという失態で、
しかもこの後に観た展覧会が撮影自由だったために、悔しさ倍増。

さて、「十八世紀の江戸絵画」とは何とも大雑把なテーマではあるが、
あくまでもこの美術館の所蔵品の中で、という前提でもあり、
普段は目にしないような作品を鑑賞できる良い機会となった(しかも、観覧無料)。

・狩野典信「大黒図」

狩野典信「大黒図」

どーんと巨大に描かれた大黒様の迫力に、まず驚かされる。

そして面白いのはその構図で、
日本画の魅力は余白にある、とは言われるけれど、
この絵にはそれがない。

上下ギリギリの幅に目いっぱい押し込まれる形になり、
大黒様の表情も、なんとなく窮屈そうだ。

これはおそらく、そういうレイアウトが生む滑稽さを狙ったのだろう。

・栄松斎長喜「花魁図」

栄松斎長喜「花魁図」

江戸絵画の美人さんはかなり多く目にしてきたけれど、
これは、歌麿と清長の良い所どりをしたかのようで、
こんな辺鄙な(失礼)美術館に所蔵しておくのはもったいないような、別嬪さんですな。

懐紙をくわえて、手を後ろに回したポーズが、
なんとも憎いじゃありませんか。

背後にある屏風?の細長い背景が、
彼女のスラリとしたスタイルを強調するのに一役買っている。

狩野派、浮世絵、水墨画、銅版画に琳派や若冲。
江戸の絵画は、迷宮のように奥深い。