ホイジンガの「文化は遊びとして発生し、展開してきた」という言葉はあまりにも有名だが、
その具体的事例をピックアップし、
それらがどのようにして、本来の目的とは異なる、
社会的・政治的影響を及ぼすことになったのかを、
つぶさに検証した本である。
個人的に印象深いのは「胡椒」で、
世界史を勉強した人なら分かると思うけれども、
なぜヨーロッパ人があそこまで血眼になって胡椒を求めたのか、
そしてそれが、いわゆる「大航海時代」の幕開けにどれほど影響を与えたのか、
あらためて読んでみると、なるほどと思わされることが多かった。
その他、ホラー映画やモノポリーといった、
従来の文化史では、決して採り上げられることのなかった事象を、
知ることができたのも、大きな収穫だった。
なぜヒトがここまで文化を発展させることができたのか、というのは、
諸説ある興味深い疑問ではあるけれども、
「驚き」や「ワクワク感」を求めるDNAを、
備え持っているからだろうことは間違いないのだろう。
例えば、音楽を理解するサルはヒトしかいないが、
明らかに音楽を楽しんでいる(と思われる)オウムは存在する。
このような、最終的には生物学的な問題になるのではあろう問題について、
社会・文化学的にアプローチした本書への興味は尽きない。