この作家の作品を読むのは2作目となるが、
これがデビュー作にして代表作(?)だという。
感想を端的に述べるならば、
「力作ではあるが、傑作ではない」
という感じか。
とある画家と、
その6人の娘が惨殺される、という、
かなり猟奇的なテーマなのだけれども、
正直、犯人がすぐに分かってしまったというのが、
僕にとってのマイナスポイントだったのかもしれないが、
まぁ、トリックにしても、
世間で言われているほど驚くものでもないし、
そもそも事件の設定が1930年代だったから、
成り立っているようなものの、
DNAや血液型による検死の技術が進んだ現代では、
まず成立し得ない内容ではある。
前半で、占星術や錬金樹の、
マニアックな設定が出てきて、
かなりワクワクさせられるのだが、
それが後半に活かされていないというか、
やや投げっ放し気味に放置されてしまうのも、
雑な感が否めない。
ただ、全編を貫く、
第二次世界大戦直前の、
世間の緊張感を背景とした、
6人の女性のバラバラ殺人にまつわる、
オカルト的な空気は、
読んでいて惹き込まれるものはあるし、
この作品の強烈な個性として、
褒めるべきポイントかもしれない。