絵画でいえばゴッホ、音楽でいえばベルリオーズは、
変わり者を通り越して、もはや「変態芸術家」といってもいい。

一時期、ミサ曲とかレクイエムに凝っていたことがあって、
中でも、ベルリオーズのこの曲は印象深かった。

ティンパニ8組、というような大編成ではあるけれども、
比較的彼の「変態ぶり」は影をひそめていて、
これは美しい曲である。

youtubeでいろいろ聴いていたら、面白い演奏があった。

どうやら、マエストロ、クラウディオ・アバドの追悼コンサート(?)のようで、
冒頭に司祭らしき人によって追悼文が読み上げられる。

おそらくフランスの教会なのだろうが、
通常のコンサートホールに比べて残響がすさまじく、

しかも大編成のため、これだけコーラス隊が後ろにいると、
指揮者や聴衆には音がdelayして到達するはずで、
かなり難しい環境であったことは間違いない。

その点を考慮しても、これはかなりの熱演だと思う。

それにしても、「Quaerens me」は、
型破りの、オケ抜き合唱アカペラの曲で、何度聴いても感動的である。

ベルリオーズといえば、「幻想交響曲」が彼の代名詞的存在なのだけれども、
この「死者のための大ミサ曲(レクイエム)」は、もっとメジャーになってもいい曲だと思う。

ただ、演奏に二時間近くを要するので、
コンサートで採り上げられる機会が少ないというのが、
この曲の不当な評価につながっている可能性もあるだろう。

僕の中では、モーツァルトのレクイエムよりも数段上の作品。