「生物はなぜ誕生したのか」(ピーター・ウォード/ジュゼフ・カーシュヴィング)

「生物はなぜ誕生したのか」(ピーター・ウォード/ジュゼフ・カーシュヴィング)

「生物はなぜ誕生したのか」(ピーター・ウォード/ジュゼフ・カーシュヴィング)

 

『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』をはじめとして、
この分野ではおなじみのピーター・ウォードと、

「スノーボールアース」説で一躍有名になったジョゼフ・カーシュヴィングの、豪華タッグによる共著である。

鳥と全球凍結、この2つに共通するキーワードは、
酸素濃度、だ。

他の星の生物はさておき、
現在の地球の生物にとって酸素はなくてはならない存在であり、

であるならば、過去の生物の絶滅や進化の原因は、
酸素濃度にあると考えるのは当然といえば当然で、

この本ではまさに、その酸素濃度をメインに、
地球生物の進化の歴史を語っている。

かつてアルバレス親子が、白亜紀末の大絶滅は小惑星の衝突によって起きたことを唱えて以来、
マスコミだけではなく多くの学者までもが、

彗星や小惑星の衝突、ガンマ星バーストなど、
「派手な」事象を、大量絶滅の原因にすることが流行っていた。

この本は、そういった説には根拠が希薄だとし、
酸素というむしろ「地味な」キーワードで、過去の絶滅をひとつずつ証明していく。

これはまさに、名探偵がひとつの証拠をもとに、
連続殺人事件を次々に暴いていく推理小説のような、知的興奮である。

そして酸素濃度の変化が起きた原因として、
「真の極移動」という新たな説を披露していることも、注目に値する。

一言で酸素濃度の変化といっても、原因はさまざまなのだが、
この「真の極移動」説は、決して荒唐無稽なものではなく、
むしろ理に適っているのではなかろうか。

この分野には名著が多いのであるが、
その中でもこの本は、頭ひとつ抜きんでていると思う。

論の展開、裏付けの確かさ、そして読み手を飽きさせない語り口、
「一流の科学本」としての条件をすべて兼ね備えているといっても、過言ではあるまい。

そして最後に。
良書は、参考文献の提示にも出し惜しみがない。

巻末に注記として挙げられている参考文献をひとつひとつ繙くだけでも、
さらなる探究心を掻き立て、満たしてくれることは間違いないだろう。

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