今回の展覧会の「目玉」は、ゴッホの「糸杉」だったようだが、
あまり僕の趣味ではない。
ゴッホは大した芸術家だとは思うが、
優れた画家とは思えない。
絵から滲み出てくる「未練がましい、いやらしさ」みたいなのが、
どうも僕は受け付けない。
今回、僕が出会えて良かったのは、まず、これ。
レンブラントの「フローラ」。
その他の、彼の著名な肖像画と比べると、
表情の描き込みや陰影のコントラストは弱いが、
スクエアな構図の中で悠然と腕を広げた女神の姿は、
絶妙なバランスで空間をレイアウトしている。
そして何よりも美しいのは、魅力的な横顔だ。
ここまで柔らかみを帯びたレンブラントの作品は、
珍しいのかもしれない。
そして展覧会の終盤、最後に僕の目を惹いたのは、
モネのこの一枚。
これぞ、絵画の中の絵画、と言いたくなるほどの傑作。
構図の大胆さもさることながら、色合い、ディテール、質感、
どこをとっても完璧だ。
前のベンチに腰掛けて、しばらくこの絵と対峙してみる。
海と空があり、岩がある。
それだけなのだけど、それだけに思わせない。
かといって、「糸杉」のような傲慢さや臆病さもない。
これは、すぐれた芸術家の目によってとらえられ、
すぐれた手によって描かれた「自然」である。
artificial(人工的)なアートと自然の融合が、
ここにあると言っていい。
と思いながら、この展覧会の副題をあらためて振り返ってみると、
「大地、海、空―4000年の美への旅」とある。
なるほど。
そういうことか。