チェリストとしてのビルスマを、
好きかと言われると、
全くそうではないのだが、
彼のチェロ、
そして音楽に対する姿勢、
物の考え方など、
演奏の根底にある、
アーティストととしての、
identityのようなものを、
この本から、
感じ取ることができた。
ボウイングの具体的な説明や、
バッハ無伴奏全曲の解説あたりは、
チェロを学ぶ者にとっては、
良かれ悪しかれ必読だと思うし、
特に、アンナ・マクダレーナやボッケリーニへの、
この上ない愛情を語っているくだりは、
天才が天才を語るというか、
対談形式であるからなおさら、
味わい深いものがある。
ビルスマ曰く、
バッハの無伴奏チェロは、
「歌う」のではなく、
「語る」ものであると。
ここを読んだとき、
自分としては、
浄瑠璃や長唄などの、
日本の伝統音楽における、
「語り」と「唄・歌」の関係性について、
つい思いを巡らせてしまった一方で、
楽器の演奏そのものを、
「語る」と表現するのは、
なるほど、と、
唸らされてしまった。
チェロに限らず、
楽器、特に弦楽器を弾く人には、
お薦めしたい一冊。