エドワード・ドルニック 著「ヒエログリフを解け: ロゼッタストーンに挑んだ英仏ふたりの天才と究極の解読レース」(東京創元社)
世界史の教科書では、

「フランス人のシャンポリオンが、
ロゼッタストーンに書かれた、
エジプトのヒエログリフを解読した」

という史実を習うが、

それ以上の詳細については、
知ることはできない。

この本は、シャンポリオンが、
如何なる手法で未知の文字を読み解いたか、

そして、意外と知られていない事実として、
シャンポリオンと同時期に、
ヒエログリフに挑んだ、

イギリスの天才科学者、
トマス・ヤング(光の干渉実験で有名)との、
「解読レース」について、
非常に分かりやすく解説している。

未知の文字解読という性質上、
内容はミステリーっぽくなるので、

そっち系の小説が好きな人にも、
オススメできる。

それにしても、
エジプトに人生を捧げたシャンポリオンと、
万能な科学者トマス・ヤングという、

専門分野や性格は全く異なるけれど、
言語に対する才能に秀でた、
同時代の二人の天才が、

未知の文字を解読していった方法は、
非常に興味深い。

幸い、ロゼッタストーンには、
直訳ではないが、ヒエログリフに、
同義のギリシャ語が添えられていたこと、

古代エジプトの文書には、
プトレマイオスやクレオパトラといった、
固有名詞が頻出すること、

古代エジプト語の子孫である、
「コプト語」を学ぶことができたこと、

といった、
「ヒント」が存在はしていたものの、

それまで解読に挑んだ多くの者が、
失敗したように、

ヒエログリフの特徴である、
その絵文字形態から、

これは表意文字であるだろう、
という誤解を、
誰もがしてしまう。
(誰だって、「猫」の絵文字があれば、
「それは猫を意味する」と思うだろう。)

シャンポリオンの優れていたのは、
絵文字は、表意の場合もあるが、

同様に表音文字でもあることを、
見抜いたことだった。

現代人、特に、
漢字に慣れ親しんだ我々からすれば、
当たり前のことのように思うかもしれないが、

18-19世紀の西洋人にしてみれば、
その発想は、なかなか困難だったに違いない。

とはいえ、
シャンポリオンの解読作業も、
決して順風満帆ではなかった。

躓きながらも、
真理を追究する執念や姿勢は、
敬するに値するだろう。

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