ニール・シュービン 著「進化の技法――転用と盗用と争いの40億年」(みすず書房)
生物進化のメカニズムを語る上で、
もはや定番となった、
「遺伝子のコピーミス」
というフレーズ。

「コピーミス」により、
偶然獲得した形質が、

生存・繁殖に有利に働いたために、
その形質がその種に定着した、

と理解されることが多いが、

果たしてそれは、
進化のメカニズムを、
正しく語っているのか。

また、もし生物の歴史を、
最初から何度も繰り返せば、

そのたびに異なった生物たちが、
誕生するだろうという、

「進化はサイコロを振るようなもの」
という考えは、
果たして正しいのか。

はたまた、
例えば魚類が両生類へと進化して、
水中から上陸を果たすには、

単に肺呼吸を開始しただけでなく、
ヒレが脚に変わる等、

さまざまなボディプランの変更が、
同時に行われる必要があるのだが、

それはどのようなメカニズムで、
可能となっているのか。

以上のような、
まさに「進化の核心」ともいえるテーマに、
真正面から切り込んでいるのが本書。

しかも仮説や推論ではなく、
化石調査やDNA分析という明晰な手法で、

真実と思われる内容に迫るプロセスは、
まさに科学の醍醐味といえよう。

最も印象的だったのは、

サンショウウオが、
餌を捕らえる特殊なメカニズムを、
図解付きで紹介するくだりで語られる、

そのあまりに珍奇な形質が、
異なる複数のサンショウウオの系統において、

あたかも必然であるかのように、
獲得されたという事実。

そこから見えてくるのは、
進化とは偶然の産物ではなく、

必然の戦略なのだ、
ということ。

ここ最近の、
知的興奮レベル上位の一冊。

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