第二十一番歌
【原歌】
今来むといひしばかりに長月の
有明の月を待ち出でつるかな
(素性法師)
今来むといひしばかりに長月の
有明の月を待ち出でつるかな
(素性法師)
【替へ歌】
君待つと誰や言ひけむ長月の
有明の月を待たず寝にけり
原歌は、
あなたがすぐ来るといったばかりに、
秋の夜明けの月が出るのを、
寝ないで待ってしまったではないですか
というさらりとした、
まるで物語の中の即興歌のよう。
なので替へ歌も、
それに対する返歌の形で、
あなたが待ってるなんて、
誰からも聞いてませんよ。
(あなたとは逆に)私は夜明けの月を待たずに、
寝てしまいました
という歌にした。
相手が恨みがましい場合の返歌は、
こういう風にとぼけた感じにするのが常套手段。
第二十二番歌
【原歌】
吹くからに秋の草木のしをるれば
むべ山風をあらしといふらむ
(文屋康秀)
吹くからに秋の草木のしをるれば
むべ山風をあらしといふらむ
(文屋康秀)
【替へ歌】
吹くからに木枯らし冬を伴へば
雨包まれて雹となるらむ
「山」+「風」=「嵐」という、
原歌のパズル的な機智(?)を、
「雨」+「包」=「雹(ひょう)」とし、
季節も秋から冬に置き換えた。
木枯らしが冬を連れてくるので、
雨が寒気に包まれて雹になるのだろう、
という歌意。