生物進化のメカニズムを語る上で、
もはや定番となった、
「遺伝子のコピーミス」
というフレーズ。
「コピーミス」により、
偶然獲得した形質が、
生存・繁殖に有利に働いたために、
その形質がその種に定着した、
と理解されることが多いが、
果たしてそれは、
進化のメカニズムを、
正しく語っているのか。
また、もし生物の歴史を、
最初から何度も繰り返せば、
そのたびに異なった生物たちが、
誕生するだろうという、
「進化はサイコロを振るようなもの」
という考えは、
果たして正しいのか。
はたまた、
例えば魚類が両生類へと進化して、
水中から上陸を果たすには、
単に肺呼吸を開始しただけでなく、
ヒレが脚に変わる等、
さまざまなボディプランの変更が、
同時に行われる必要があるのだが、
それはどのようなメカニズムで、
可能となっているのか。
以上のような、
まさに「進化の核心」ともいえるテーマに、
真正面から切り込んでいるのが本書。
しかも仮説や推論ではなく、
化石調査やDNA分析という明晰な手法で、
真実と思われる内容に迫るプロセスは、
まさに科学の醍醐味といえよう。
最も印象的だったのは、
サンショウウオが、
餌を捕らえる特殊なメカニズムを、
図解付きで紹介するくだりで語られる、
そのあまりに珍奇な形質が、
異なる複数のサンショウウオの系統において、
あたかも必然であるかのように、
獲得されたという事実。
そこから見えてくるのは、
進化とは偶然の産物ではなく、
必然の戦略なのだ、
ということ。
ここ最近の、
知的興奮レベル上位の一冊。