長い歴史の間、
触れられてこなかった、
「悪とは何か」について、
著名な精神科医が、
斬り込んだ本。
「悪とは何か」という、
テーマの壮大さに対して、
あくまでも、
自らの医者としての、
治療事例をのみを題材にしているのが、
スケール的に、
ちょっとしょぼいかしら。
そして最後の事例では、
まるで治療が進まない患者の方が、
遂にしびれを切らし、
この医者の元を去っていくのであるが、
自らの治療の不手際を棚にあげて、
この患者の悪い点を、
これでもかとばかりに挙げまくり、
これぞまさに「悪」であると、
負け惜しみ的にまくし立てていて、
懐が小さいというか、
負けず嫌いが過ぎるというか、
自説の主張のためには、
患者を見下すことぐらい、
屁とも思わない医者なのだろう。
前半で「科学的に」と言っておきながら、
後半は感傷的・感情的な話になるのも、
どうかと思うわけで、
評判が良い本であるわりに、
自分には、まったく響かなかった。