「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」(@国立新美術館)

「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」(@国立新美術館)

美術館に行くのなんて、
どれぐらいぶりだろう。

自らの行動・思考備忘録である、
当ブログを調べてみたら、

どうやら約2年半前が、
最後の美術展鑑賞らしい。

そこからコロナやら何やらで、
すっかり足が遠のいてしまったが、

自分の中の絵画愛は、
決して死んだわけではなく、

いや、まさにそれを確かめるために、
このGWに絵画鑑賞復帰戦を仕掛けることにした。

「メトロポリタン美術館展」。

2年半も芸術から遠ざかっている眼にとっては、
願ってもない題材であり、

しかも、ルーベンス、セザンヌ、モネなど、
巨匠たちの日本初出品も数多くあるではないか。

・・・・・・・・・
・・・・・

いざ、出陣。

入り口に一番近い作品が、
一番混んでいるのと、

ずーっと世間話をしている御婦人達
(不運なことに、なぜか自分と動きが同期する)
が目立つのは、

相変わらず日本の美術館の特徴で、
それすら懐かしい(苦笑)。

さてここでは、
以前同様、独断と偏見で、

あくまでも僕が素敵!
と思った作品について、
好き放題の紹介をしておこう。

・「ヴィーナスとアドニス」(ティツィアーノ)
「ヴィーナスとアドニス」(ティツィアーノ)
おそらく同工異曲の作品は多いのだろうが、
とにかくデッサン力が、
この時代のどの画家と較べてもズバ抜けてる。

男女二人の姿勢は、
決して普通のものではなく、
まさに「一瞬」を捉えたものなのだが、

女性の背中の筋肉の隆起や、
臀部の圧され具合など、

写真を撮って後で描いたのか?
というぐらい、自然でリアルだ。

そしてさらに特筆すべきは、
二人の表情。

戦地に赴く愛する人にすがる、
女性の表情と、

それをやや冷たく突き放す、
男性の視線。

デッサンは優れていても、
最後の最後で、

「人物の表情」で失敗している、
巨匠の作品が数多くあるだけに、

一分の隙もない、
これはまさに名画。

・「割れた卵」(ジャン=バティスト・グルーズ)
「割れた卵」(ジャン=バティスト・グルーズ)
僕の眼を惹きつけたのは、
まずは、人物たちの表情。

上のティツィアーノの紹介でも描いたように、
人物の表情を描き込むのは、
本当に至難の業なのだが、

卵を割ってふてくされる少女、
それを咎める老女、
それをなだめる青年、
そして割れた卵の復元を試みる少年、

と、各人物がまさに、
「役割どおり」の表情をしており、

それぞれのセリフを、
吹き出しで書けるレベルに達している。

そして次に色。

少女の鮮やかな青と、
青年の赤、老女の緑、

色彩のコントラストも、
見事に付けている。

あと構図でいえば、
この絵の中心は、
ちょうど青年のヘソの辺りにあって、

左上を大胆に空白とし、
人物を右下にほぼ三角形に配置しているのが、
絶妙な安定感なんだな。

この絵を観るだけで、
まるで小説を一冊読んだかのような、

想像力の世界に、
誘ってくれる作品である。

・「ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む」(ターナー)
「ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む」(ターナー)
この美術展の副題が、
「西洋絵画の500年」とあるように、

さまざまな時代の、
さまざまな画家の作品を、

一度に観られるのは、
大いなる利点である。
(厳密にいうと、マイナス点もあるが)

それまでのロココの香りのする作品群から、
いきなりこのターナーを観せられて、
何も感動しない人がいれば、

申し訳ないが、
その人は絵を観るのを諦めた方がいい。

いつまで観ていても飽きない名画とは、
こういう作品のことだろう。

画面の半分以上を占める空。

そして何よりも印象的なのは、
「黒」で描かれた二艘の舟だ。

ターナーは「黒」の使い手だと、
僕は思っているのだが、

この作品においても、
画面下部に「黒」を配置することで、

見事なバランス感を保つことに、
成功している。

いや、それ抜きにしても、
美しいですよ、この絵は。

・「花咲く果樹園」(ゴッホ)
「花咲く果樹園」(ゴッホ)
そして最後は、
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。

まず観たときは、
この南仏のような(行ったことないけど)色彩が、
とにかく眩しくて、

でも次にこの木の、
不気味ともいえる枝っぷりが眼に入ってくると、

その色彩と形状のコントラストが、
いい意味でも悪い意味でも、
「ゾクゾク」させてくれる。

似たような構図は、
それこそ広重の浮世絵とかにもあるのだが、

この絵の持つ天才的な色彩は、
ライヴじゃないと味わえないと思う。

まずはカラーを網膜に焼き付けて、
その後に脳がフォルムを確認するという作業。

そして最後に、
心に感想がくる。

こういう、感覚を総動員させられる画家は、
そういるもんじゃないね。

あらためて、ゴッホは怖い。

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