デイヴィッド・ホックニー / マーティン・ゲイフォード 著「絵画の歴史 洞窟壁画からiPadまで」(青幻舎)
原題の「A history of pictures」を、
絵画の歴史」と和訳したのは、
大変なミスである。

これだけで、
この本の価値を半減させてしまった、
と言っても過言ではあるまい。

pictureには、
絵画の他に、写真、映画、
あるいはテレビの映像などの、
幅広い意味があるわけで、

そう、この本は、
副題にあるように、
洞窟壁画からデジタル画像までも含めた、

あらゆる視覚芸術の歴史や、
それぞれの関係性について語った、
壮大かつ意欲的な本であって、

それを「絵画の歴史」としてしまっては、
物足りないというか、
味気ないというか、

意図的だろうが、
そうでなかろうが、
要は「誤訳」である。

それにしても、
フルカラーで350ページ強、

デイヴィッド・ホックニーと、
もう1人との対談による、
何とも贅沢な本だ。

美術好きならば、
挿入された多数の図版を眺めるだけでも、

この本を手に取る、
意味があるに違いない。

個人的に印象的だったくだりは、
カラヴァッジョやフェルメールといった、
絵画の巨匠たちが、

実は、カメラを使って、
絵を描いていたという事実。

二人の著者は、
決してそれを否定するわけではなく、
(むしろ肯定している)

カメラの画像をベースに、
絵画を描くことの意義について、
熱く語っている。

※なお、ここでいうカメラは、
写真を現像できるものでも、
デジタル画像を映写できるものでもなく、

物体の姿を映写する、
いわゆる「カメラ・オブスクラ」のことである。

そう言われてみれば、
巨匠の作品であれ、
そうでないものであれ、

「まるで写真で撮ったかのような」
精巧を極めた絵画作品に、
出会うことはたびたびある。

それらが実は、
カメラを下絵に用いていたのだとすれば、
納得がゆくし、

かといって、
それでその作品の価値を、
貶めようとも思わない。

この本では、
その話題から、

果たして写真は芸術なのか、

映画が生まれて、
写真の立場はどうなるのか、

iPadで描いた作品は、
果たして絵画と言えるのか、
等々、

対談という分かりやすい形式で、
視覚芸術の意義についての、
広くディープな内容に、
拡がってゆく。

目からウロコの視点を、
数々与えてくれる、
美術好き必読の書。


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