百人一首替へ歌

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百人一首替へ歌(No.17)

第三十三番歌 【原歌】 ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ (紀友則) 【替へ歌】 しづ心なき夕暮の蝉しぐれ ひさかたの空を夏過ぎぬらむ この歌についてはもはや説明不要、 百人一首のみならず、古典和歌のうちで、 最も有名な歌のひとつだろう。 個人的には、 末尾の助動詞「らむ」がポイントだと思っていて、 最後にこの主観的な助動詞を置くことで、 純粋な叙景歌ではなく、 いかにも「古今 […]

百人一首替へ歌(No.16)

第三十一番歌 【原歌】 朝ぼらけ有明の月と見るまでに 吉野の里に降れる白雪 (坂上是則) 【替へ歌】 時知らぬ雪と見まがふ朝ぼらけ 里ぞ凍れる月の光に 今回紹介する二首はいずれも、 「Aだと思ったらBだった」 という、 いかにも古今集時代らしい機智に富んだ歌。 この三十一番歌は、 雪を月明りに見立てているわけだが、 それ自体はステレオタイプで、 特に面白みはないものの、 初句の「朝ぼらけ」という語 […]

百人一首替へ歌(No.15)

第二十九番歌 【原歌】 心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花 (凡河内躬恒) 【替へ歌】 心あてに触ればや触れむ初霜に 濡れたる如き白肌の夜 次歌の壬生忠岑とともに、 『古今和歌集』の撰者である凡河内躬恒だが、 勅撰和歌集に約200首も採られているにも拘わらず、 やや影が薄いのは、 やはり同じく『古今和歌集』の撰者でもある、 紀貫之の存在が大きいだろう。 貫之がどちらかといえば、 […]

百人一首替へ歌(No.14)

第二十七番歌 【原歌】 みかの原わきて流るるいづみ川 いつ見きとてか恋しかるらむ (中納言兼輔) 【替へ歌】 岸辺にて君と戯るいづみ川 いつ見し記憶とともに流るる 原歌の前半は、 まるっと序詞になっていて、 その末尾の「いづみ川」との音のつながりから、 「いつ見」を導き出している。 なので歌意としては後半の、 「一体いつ見たからといって、 あなたのことが恋しいのでしょうか」 というだけなのであるが […]

百人一首替へ歌(No.13)

第二十五番歌 【原歌】 名にし負はば逢坂山のさねかづら 人に知られで来るよしもがな (三条右大臣) 【替へ歌】 せめてただ逢ふよしもがな蔓草の 地を這う想ひに絡め取りてむ さねかづらは蔓草(つるくさ)の一種で、 「ね」という音が「寝」を連想させるのと、 蔓草を「繰る」と「来る」を掛けるという、 いかにも定家好みの技巧を凝らした歌。 たしかに蔓草というのは、 どことなくエロチックなわけで、 そのくね […]

百人一首替へ歌(No.12)

第二十三番歌 【原歌】 月見ればちぢにものこそ悲しけれ わが身ひとつの秋にはあらねど (大江千里) 【替へ歌】 秋の夜の孤独に耐へかね街ゆけば わが身ひとつにネオン染み込む 人気度ではおそらく、 百人一首中のNo.10には入るだろう。 秋は自分だけに来るわけではないのに、 なぜ秋の月を眺めると、こうも悲しくなるのか、 という、現代人にも理解できる感覚を、 きわめて平易な言葉で詠んでいるのが、 親近 […]

百人一首替へ歌(No.11)

第二十一番歌 【原歌】 今来むといひしばかりに長月の 有明の月を待ち出でつるかな (素性法師) 【替へ歌】 君待つと誰や言ひけむ長月の 有明の月を待たず寝にけり 原歌は、 あなたがすぐ来るといったばかりに、 秋の夜明けの月が出るのを、 寝ないで待ってしまったではないですか というさらりとした、 まるで物語の中の即興歌のよう。 なので替へ歌も、 それに対する返歌の形で、 あなたが待ってるなんて、 誰 […]

百人一首替へ歌(No.10)

第十九番歌 【原歌】 難波潟短き蘆のふしの間も 逢はでこの世を過ぐしてよとや (伊勢) 【替へ歌】 蘆生ふる水際に沈む冬の日の 短き世かな難波潟の暮れ 十九・二十番歌は「難波」シリーズ。 原歌は、 難波潟に生える蘆の節の間のような、 ほんの短い間でさえも、 恋しいあなたに逢わずに過ごせというのでしょうか、 という意味で、 前半は丸々序詞になっているわけだが、 替へ歌では、 蘆の茂っているあたりに沈 […]

百人一首替へ歌(No.9)

第十七番歌 【原歌】 ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは (在原業平朝臣) 【替へ歌】 ちはやぶる神の社に来てみれば 秋は溜まりぬくれなゐの川に 業平の歌で、 かつ人口に膾炙しているわりには、 原歌にはこれといった面白みがない。 ただ、屏風絵を見て詠んだといわれるだけあって、 川面を紅葉が覆い尽くしているという、 視覚的イメージは鮮烈である。 僕の中では、この情景は動的、 つ […]

百人一首替へ歌(No.8)

第十五番歌 【原歌】 君がため春の野に出でて若菜摘む わが衣手に雪は降りつつ (光孝天皇) 【替へ歌】 若菜摘む君の背中に雪片の 触れては消える春まだ浅き野 ここまで替へ歌をやってきて、 ひとつのパターンを発見した。 それは主体を入れ替えるということ。 この十五番歌でいえば、原歌は、 「詠み手=若菜摘む人」 なのに対し、 替へ歌の方は、 「詠み手=若菜摘む人を見ている人」 となる。 原歌の緑と白の […]

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