古典

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「藤河の記」(一条 兼良)

関白太政大臣まで昇り詰めた政治家にして、 和漢に通じた碩学でもあった一条兼良による紀行文。 応仁の乱による混乱から奈良に避難していた作者が、 家族に会うために美濃国へ往復した際の出来事や、 歌枕に寄せた和歌などが記されている。 古典作品には、中身が大したことなくても、 何故か冒頭だけは気合の入ったものが多いわけで、 これもその類かもしれない。 やや長くなるが、作品冒頭を引用してみよう。 胡蝶の夢の […]

「小島のくちずさみ」(二条 良基)

言わずと知れた連歌・和歌界の大御所、 二条良基による作品。 南朝方に京都を占領され、 北朝の後光厳天皇は美濃の小島(おじま)に逃れるが、 それに従った作者による、都から小島までの紀行文パートと、 足利義詮が都を奪還して還幸するまでの、 田舎での不便な生活を描いた日記文パートからなる。 作中の二か月余り、 作者は「瘧(おこり)」を患っており、 そこに「ししこらかす」という珍しい動詞が使われていること […]

動詞「ししこらかす」

『源氏物語』の「若紫」巻の冒頭、 病気を患う光源氏に対して、ある人が下記のように勧める。 「北山になむ、なにがし寺といふところに、かしこき行ひ人侍る。 去年の夏も、世におこりて、人々、まじなひわづらひしを、 やがて、とどむるたぐひ、あまた侍りき。 ししこらかしつる時は、うたて侍るを、とくこそ試みさせ給はめ。」 ざっと意訳すると、こんな感じになる。 「北山の何とか寺に偉い修行者がいます。 去年の夏も […]

「都のつと」(宗久)

南北朝時代の歌人、宗久による紀行文。 一夜の旅の宿にて、老の眠を醒まして、 壁に向かへる残りの灯をかかげそへて、 道すがらの名高き所々の心に残りしを、 忘れぬさきにとて、思ひ出づるままに、 前後の次第を言はずこれを記しつけて、 都のつとにとて持ち上がりぬ。 という末尾の一文が、 本作の内容、そしてタイトルの由来を端的に表している。 現代ではあまりメジャーな作品とは言い難いが、 後世、明らかに芭蕉が […]

「竹むきが記」(日野 名子)

特に深い理由はなく、 毎日寝る前に布団の中で古典を読むことにしているのだけれど、 いやぁ、この作品は睡眠導入としては最適だった。 南北朝初期の動乱の中にあって、 幼い息子を権力争いから守り育てる苦労や、 当時の朝廷(北朝)や公家たちの様子が、 克明に描かれている。 ただ、「中務内侍日記」と同様、 事実を客観的に書き残そうという意識が強いせいか、 文学作品というよりは、記録的価値の方が高いのかも。 […]

「中務内侍日記」(藤原 経子)

伏見院に東宮時代から女官として仕えた著者による回想日記。 古典文学の女流日記というと、男女や親子関係など、 プライベートな悩みについて吐露したものが多い印象だけれども、 この作品は、著者自身の個性や人格を表現しながらも、 客観的描写に徹する部分が多くなっている。 伏見院が東宮時代の前半と即位後の後半という、 大きく二段構成となっており、 前半は、いかにも平和な宮廷生活ともいうべき、 作品中に頻繁に […]

初春(はつはる)

すでに1月も後半になってしまったが、 ちょっと正月らしい話題を。 新しき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事 は、以前の記事でも紹介した、 『万葉集』の最後を飾る家持の歌であるが、 実は「初春(はつはる)」という語が、 和歌に詠み込まれている例は、極めて少ないことに気が付いた。 『万葉集』では上記の他に、 初春の 初子の今日の 玉箒 手に取るからに 揺らく玉の緒 の一首のみ(たぶん)。 […]

「十六夜日記」(阿仏)

高校生の教材でも使われているので、 よく知られてはいるが、 「十六夜日記」は「いざよい(の)にっき」と読む。 「いざよい」は上代では「いさよひ」で、 岩波古語辞典によれば、 「いさ」は「いさかひ(諍ひ)」と同じで、 物事が前進しないこと、 「よひ」は「ただよひ(漂ひ)」と同じで、 不安定な様子、 を表すとのことで、 要するに「いさよひ」は、「ためらっているさま」という意味となる。 そこになぜ「十六 […]

「うたたね」(阿仏)

作者は『十六夜日記』で有名な、阿仏(または阿仏尼とも)。 十代後半の宮仕え時代に、 妻子ある男性と恋をして、フラれて、 出家して、傷心の旅に出て、という自伝的作品。 作者自身が自らの性格を、 「うちつけにものむつかしき心のくせになん」と書いているぐらい、 とにかく衝動的で、 いわゆる「めんどくさい」女性の典型。 男の側からしても、そういう性格に懲りたのか、 段々と通わなくなってしまい、 その辛さを […]

年末の歌

このタイトルを見て、 「紅白歌合戦」や「レコード大賞」のことかと思った人もいるだろうけれど、 残念そこはukiyobanareのことなので、 歌と言えば、和歌のことでございます。 年末を詠った和歌を色々と調べていたところ、 俊成のこんな歌が「続後撰和歌集」にあった。 なかなかに 昔は今日も 惜しかりき 年や還ると 今は待つかな 現代語訳してみると、 「若かった頃は、一年が終わるのがもったいない気が […]

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