古典

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初春(はつはる)

すでに1月も後半になってしまったが、 ちょっと正月らしい話題を。 新しき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事 は、以前の記事でも紹介した、 『万葉集』の最後を飾る家持の歌であるが、 実は「初春(はつはる)」という語が、 和歌に詠み込まれている例は、極めて少ないことに気が付いた。 『万葉集』では上記の他に、 初春の 初子の今日の 玉箒 手に取るからに 揺らく玉の緒 の一首のみ(たぶん)。 […]

「十六夜日記」(阿仏)

高校生の教材でも使われているので、 よく知られてはいるが、 「十六夜日記」は「いざよい(の)にっき」と読む。 「いざよい」は上代では「いさよひ」で、 岩波古語辞典によれば、 「いさ」は「いさかひ(諍ひ)」と同じで、 物事が前進しないこと、 「よひ」は「ただよひ(漂ひ)」と同じで、 不安定な様子、 を表すとのことで、 要するに「いさよひ」は、「ためらっているさま」という意味となる。 そこになぜ「十六 […]

「うたたね」(阿仏)

作者は『十六夜日記』で有名な、阿仏(または阿仏尼とも)。 十代後半の宮仕え時代に、 妻子ある男性と恋をして、フラれて、 出家して、傷心の旅に出て、という自伝的作品。 作者自身が自らの性格を、 「うちつけにものむつかしき心のくせになん」と書いているぐらい、 とにかく衝動的で、 いわゆる「めんどくさい」女性の典型。 男の側からしても、そういう性格に懲りたのか、 段々と通わなくなってしまい、 その辛さを […]

年末の歌

このタイトルを見て、 「紅白歌合戦」や「レコード大賞」のことかと思った人もいるだろうけれど、 残念そこはukiyobanareのことなので、 歌と言えば、和歌のことでございます。 年末を詠った和歌を色々と調べていたところ、 俊成のこんな歌が「続後撰和歌集」にあった。 なかなかに 昔は今日も 惜しかりき 年や還ると 今は待つかな 現代語訳してみると、 「若かった頃は、一年が終わるのがもったいない気が […]

「東関紀行」

齢は百とせの半に近づきて、鬢の霜やうやくに涼しといえども、 なす事なくして徒に明し暮すのみにあらず、 さしていづこに住みはつべしとも思ひ定めぬ有様なれば という、さりげない中にも格調の高さがあるフレーズで始まる、 13世紀前半、不詳の作者の手になる紀行文。 京都から鎌倉へと下る道中を綴っているという点までも、 以前紹介した「海道記」と共通であるが、 あちらがかなり難解な和漢混淆文だったのに対し、 […]

「海道記」

13世紀の前半、京を出発した作者が、 鎌倉に下った際の紀行文。 作者は、かつては鴨長明ともいわれていたらしいが、 年代が合わず、 全体が漢文書き下しの形式で書かれていることや、 内容の思想性からも、 『平家物語』の成立に深く関係する人物の手によるものだろう、 というのが通説になっているらしい。 さて内容については、例えば、 但極楽西方ニ非ズ、 己が善心ノ方寸ニアリ。 泥梨地の底二非ズ、 己が悪念の […]

「高倉院升遐記」(源 通親)

  「升遐」とは天皇や貴人の死のこと。 以前紹介した「高倉院厳島御幸記」同様、源通親による日記で、 厳島への旅から戻って約1年後に高倉院が崩御、 その悲しみの心の中や院との思い出を、 100首以上の和歌をメインに綴った、歌日記的な作品。 源通親という人は、かなりの政治家だったようで、 そう考えると、この作品も彼の真の心の声というよりは、 どうも世間に対する「忠義心」のアピールのような気が […]

「高倉院厳島御幸記」(源 通親)

  「creativityと移動距離は比例する」という格言(?)があるぐらい、 現代での長距離移動は当たり前になったが、 日本は国土が狭いと雖も、我々は定住が基本の農耕民族であり、 しかもかつての貴族たちにとっては、 移動とはそれこそ命がけの大事件であって、 そのことは『土佐日記』『伊勢物語』『源氏物語(須磨・明石)』などにもよく表れているし、 いわゆる「道行」とは、まさに「魂をすり減ら […]

「浮世風呂」(式亭 三馬)

  やはり定期的に古典を読まないと、どうも落ち着かない。 そういえば江戸の戯作の類にはあまり縁がなかったので、 滑稽本の代表作『浮世風呂』を読んでみることにした。 全編ほぼ会話のみで成り立っているので、 軽快・痛快であることはもとより、 当時の文化や風俗に関する情報が盛り沢山であるため、 知識面での興味にも事欠かない。 個人的に特に気になったのは、 1.江戸の話し言葉について 2.当時の […]

「中国古典文学大系22 大唐西域記」(玄奘)

たしか今年の2月ぐらいから読み始めた気がするので、 かれこれ半年以上、 就寝前とかに時間を見つけて、ちびちびと読み進め、 ようやく読了した。 言わずと知れた『西遊記』のモデルともなった玄奘の旅行記なのだが、 肩すかしを喰らったというか、 どうやら大きな勘違いをしていたことに途中で気付いた。 いくら中国側の許可証があったといっても、 中国からインドまでの陸路の道のりは、 砂漠、山脈、密林、猛獣、山賊 […]

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